桃山時代を代表する画人、長谷川等伯の作品
安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した絵師・長谷川等伯の晩年期の傑作。
左隻には飛び交うカラスたち動きを捉えた一瞬が、右隻には水辺に憩うシロサギのゆるやかな情景が、対照的に描かれている。
幅各354cmの大パノラマを、左から右へと大きく流れる樹木や水面、遠方に見える山々の稜線が繋いで一体感をつくるなかに、静と動、白と黒といったコントラストが巧みに描出されている。
旧川村コレクション。
天文8(1539)年、能登国(石川県)七尾に生まれる。
養父・長谷川宗清に絵の手ほどきを受け、はじめ「信春」と号して能登を中心に北陸で仏教画を多く描いた。
33歳で妻子を伴って上洛し研鑽を積んだ後、等伯51歳のときに大徳寺の山門天井画と柱絵の大仕事を成し遂げ、一躍有名絵師の仲間入りを果たす。
大徳寺の施主であった千利休や、祥雲寺の金碧障壁画を描かせた豊臣秀吉などの後押しも得つつ、一介の絵師から狩野派をも脅かす長谷川一門を築くまでに勢いを増し、日本美術史に大きく名を刻んだ。
代表作の一つとされる国宝《松林図屏風》(東京国立博物館蔵)の水墨画から、国宝《楓図壁貼付》(智積院蔵)の安土桃山時代らしい金碧画まで、あらゆる画風に長け、多くの作品が国宝、重要文化財に指定されている。
Photographer: YASUNARI KIKUMA