CHAPTER 5
仕立てのお仕事
─ コーディネート編 ─

お仕立てをお願いしてからひと夏が過ぎた気持ちよい秋晴れの某日、ついに完成したお着物との対面です! いつもニコニコ笑顔の亀井さんがたとう紙を開くと、あざやかなグリーンが目に飛び込んできました。

↑仕立て上がった色無地を亀井さんが開いて見せてくれました。

「若菜色、と呼んでいますが縮緬ならではの〝しぼ〟によって光の当たり方で色味がさまざまに変化しますから飽きずに長く着ていただけると思います」と、着物を開きながら、家紋を見せてくれました。

「家紋の部分は生地の色を抜いて、墨で描きます。たいへん繊細な作業で専門の職人さんがおられるのですが、以前よりも少なくなられたとうかがっております。」とのこと。今年は和装業界の職人さんたちにとっても厳しい一年だったそうです。

↑まずは家紋をチェック(左)余った残布はこれだけ!和服は無駄がないんですね。(右)

次に手渡されたのは判を押された残布。生地の品質証明でもありますが、今回の仕立てで余った生地はたったこれだけ、と聞いてびっくり。和服は本当に無駄がないんですね。

「さて、お着物と襦袢をご確認いただきましたら、次に必要となるのは帯です。これも実にさまざまな種類があって、組み合わせは無限大ですが、今回は来春に開かれる予定のお茶事のため、とうかがっておりますので、私の方でいくつか候補を選んでみました。試着してみませんか?」とうれしいご提案!

↑帯合わせをするためにちょっと試着。

「ぜひ試着させて下さい! ただ、お茶事の帯には決まりがあるんですか?」

「明確にこれはダメ、といった決まりはありませんが、お茶事の格や趣向、季節、参加者の立ち位置といったTPOをわきまえる必要があります。あと帯留などの装飾品は付けないほうがよいですね」とのこと。なるほど、最初から1人で選ぶのは難しそうです。

「最初にご紹介するのは松青海波文様の帯です(左上)。古典柄ですが明るい色味のパターンデザインで、めでたい雰囲気がありますね。次が桜を織り上げたもの(右上)。3〜4月の桜がこれから咲くという頃にお召しになるのでしたらオススメです。それから少々現代的デザインですがポピーの花を描いた帯……」

「ポピー! かわいい!」

「では軽く合わせてみましょうか(笑)」

↑いくつか試着したなかでいちばんのお気に入りはこれ! 着物が無地なので、絵画的でモダンな花模様が施された銀地の帯がよく映えます。

「ポピーの花柄自体はかわいいのに、合わせてみると上品で大人っぽくなりますね」

「銀地で、帯だけですと大胆な印象ですが、色無地と合わせることで調和がとれると考えましたが、予想以上にお似合いです」

「もうこれに決めちゃおうかしら(笑)」

「帯を決めたら帯締めと帯揚げも。それからお茶事でしたら小物類を入れる数寄屋袋やバッグも選ばないと……」

↑帯が決まったら、帯締め、帯揚げを合わせて選びます。目移りして迷ってしまいますが、私にとってはうれしい悩みです。

↑バッグも忘れてはなりません。パステル調のドット柄がなんともキュート。

今回は、ゑり善さんのおかげでステキな色無地を誂えることが出来ました。春にはバッチリコーディネートして読者のみなさんにお披露目したいと思います。

次号は最終回特別編として、帯留を探しに高台寺のてっさい堂を訪ねます。おたのしみに! 次号は最終回特別編として、帯留を探しに高台寺のてっさい堂を訪ねます。おたのしみに!